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大阪地方裁判所 平成元年(ワ)7419号 判決

原告

大阪駅前第三ビル区分所有者協議会

(従前の名称・大阪駅前第三ビル運営協議会)

右代表者理事長

中野振興株式会社代表取締役

中野優

右訴訟代理人弁護士

土橋忠一

被告

大阪市

右代表者市長

西尾正也

右訴訟代理人弁護士

松浦武

右訴訟復代理人弁護士

福居和廣

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

原告が大阪駅前第三ビル三階駐車場に通ずる同ビル北側の昇降車路を使用するにつき、その使用料債務の存在しないことを確認する。

第二事案の概要

一争いのない事実等

1  大阪駅前第三ビル(以下「第三ビル」という。)は、大阪駅前市街地改造事業により被告が建設した鉄骨鉄筋コンクリート造鉄骨造陸屋根地下四階付三四階建の区分所有建物である(当事者間に争いがない)。

2  原告は、「ビルの調和と繁栄と管理運営の円滑を期する」ことを目的として第三ビルの管理規約により設置された団体で、同ビルの区分所有者の中から選任された理事をもって組織されているものであり(当事者間に争いがない)、平成三年三月一四日の同規約改正により、その名称が「運営協議会」から「区分所有者協議会」に変更され(〈書証番号略〉)、更に、平成四年四月一〇日の同規約改正により、第三ビルの管理者とされたものである(〈書証番号略〉)。

3  第三ビルの北側道路上には、第三ビルの地上三階、地下三階及び大阪駅前第四ビルの地上三階、地下四階の各駐車場に通ずる昇降車路(以下「本件車路」という。)が設置されている(当事者間に争いがない)が、被告は、昭和五四年九月一三日、第三ビルの管理規約(平成四年四月一〇日付け改正前のもの)により第三ビルの管理者とされていた大阪市街地開発株式会社との間で、本件車路の使用契約(以下「本件使用契約」という。)を締結し、それ以降、右契約に基づき同社を通じ、一駐車区分あたり月額金三六〇〇円の割合で計算した車路使用料と電気料金、清掃費用、小規模補修費等の維持費用の支払いを受けてきた(〈書証番号略〉、証人第十忠尚)。

二原告の主張

原告は、本件使用契約に基づき第三ビルの区分所有者らが負担することとなる本件車路の使用料債務につき、次のように主張して、右債務の不存在確認を求めた。

1  本件車路は、第三ビル地上三階、地下三階の各駐車場への唯一の進入路であって、これを通らなければ右駐車場の利用は全く不可能であり、また、本件車路は、屋根も囲壁もなく、第三ビルとオーバーブリッジ、通風排気設備等により結合しており、その構造上独立の所有権の客体となり得ないものである。したがって、本件車路は、構造的にも機能的にも第三ビルの建物の一部であって、第三ビル区分所有者らの共用施設であるから、右区分所有者らが被告に対し本件車路の使用料を負担すべき筋合いのものではない。

2  大阪市街地開発株式会社には、第三ビルの管理規約上、本件使用契約を締結する権限がなかった。

3  (予備的主張)本件車路は、第三ビル地上三階、地下三階の各駐車場への唯一の進入路であるから、その使用料は、公の道路は一般に無料で交通の用に供せられるべしとの「道路の無料公開の原則」に準じ、無料であるべきである。

4  (予備的主張)被告は、第三ビルの分譲案内において、地上三階、地下三階にそれぞれ駐車場のあることを明示しながら、本件車路の使用料については一切これを記載せず、また、右地上三階駐車場に至る場合は有料とし、地下三階駐車場に至る場合は無料というように一貫しない取扱いをしており、信義則上、本件車路の使用料を徴収することは許されない。

5  (予備的主張)地方自治法九六条一項四号によると、公の施設についての使用料の徴収は市議会の議決を要する事項に属し、同法二二八条一項によると、その徴収方法等は条例で定めなければならないとされている。また、本件のようにその施設の利用が義務づけられている場合には、使用料は徴収できないとされている。しかるに、本件では、右のような議決も条例もなく、被告は、一般的な条例、規則の定めに準じて使用料を決定しているに過ぎないのだから、その使用料の徴収は地方自治法に違反するものであり、また、その徴収手続には明白かつ重大な瑕疵がある。

三被告の反論

1  原告の主張1(所有権の帰属)について

第三ビルは、「公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律」に基づき、大阪駅前市街地改造事業の大阪駅前第二地区(第三、第四棟)として事業認可を受けた施設建築物であるが、本件車路は、同法に基づき定められる管理処分計画に右建築施設の部分として記載されておらず、したがって、第三ビルの区分所有者らへの譲渡対象部分とはなっていない。

本件車路は、大阪駅前市街地改造事業において整備された都市計画道路大阪駅前支線第五号線上に設けられた道路工作物としての施設であって、現在工事が進められている大阪駅前ダイヤモンド地下街の下に建設中の公共地下駐車場の車路施設となることを予定して築造されたものであり、その敷地、基礎、構造、工事時期等が第三ビルのそれとは全く異なるものである。

第三ビルの地上三階、地下三階の各駐車場への進入路については、第三ビルが区分所有の民間ビルとなることから、右進入路を建物敷地外の道路上に設置することは原則として許されず、他方、これを建物敷地内に設置すれば、従前の地権者を収容すべき地上一階地下一階部分の床面積が減少し、円滑な管理処分計画の実現が困難になるという事情があったため、右公共駐車場用の車路施設を利用するという方法を採ることとしたものである。

2  原告の主張2(無権限)について

大阪市街地開発株式会社は、昭和五四年九月三日に開催された第三ビル区分所有予定者集会において第三ビル管理者に選任されたものであるが、第三ビル駐車場の管理業務は、同集会において議決された第三ビル管理規約(〈書証番号略〉)の二七条一項四号、六号に該当し、その駐車場運営に関して必要な本件使用契約を締結する行為は、同一九号に該当するものであるから、大阪市街地開発株式会社には、第三ビル管理規約上、第三ビル管理者として本件使用契約を締結する権限があった。

3  原告の主張4(信義則)について

地下三階駐車場は被告の所有するものであるから、車路使用料を徴していないのであり、また、地下三階荷さばき場については、その施設の性格上使用料を免じているものである。

4  原告の主張5(地方自治法違反)について

本件車路は、地方自治法が規定する公の施設として設置されたものではなく、大阪駅前市街地改造事業において、将来建設される公共地下駐車場への進入路として設置されたものであり、大阪市が施行者として「公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律」の規定により管理するものであるから、同法五六条により大阪市の財産の管理及び処分に関する法令は適用しないこととされ、したがって、地方自治法九六条及び同法二二八条一項は適用されない。

四本件の争点は、原告の右主張1ないし5の当否である。

第三争点に対する判断

一前記争いのない事実等に証拠(〈書証番号略〉、証人第十忠尚、原告代表者本人(一回、二回))及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実を認めることができる。

1  大阪駅前市街地改造事業(以下「本件事業」という。)は、木造家屋等により構成されていた大阪駅前の密集市街地につき、土地の高度利用と地区全体の不燃化等を図るため、被告が、「公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律」に基づき昭和三六年一一月二二日に着手し、五路線の都市計画道路(大阪駅前支線第一ないし第五号線)と四棟の施設建築物(大阪駅前第一ないし第四ビル)の建設等を行い、昭和五八年三月にその完成をみたものである。

第三ビル(正式名称・大阪駅前市街地改造ビル第三号館)は、本件事業のうちの第二地区として、被告が、昭和五一年一二月一七日に着工し、昭和五四年九月一二日に第一期工事につき、昭和五六年六月一日に第二期工事につき、それぞれ工事完了の公告をなした施設建築物であり、地下四階地上三四階建、延床面積一二万一二七六平方メートルを有する区分所有建物である。

2  第三ビルの地下三階には、専用部分としての駐車場(被告が所有)及び共用部分としての荷さばき場が設けられており、地上三階には、共用部分としての駐車場が設けられている。右地上三階駐車場は、第三ビル管理者と利用希望者との間で駐車場使用契約(昭和五五年当時で一駐車区分あたり月額四五〇〇〇円)を締結するという形式で運用されている。

3  本件車路は、第三ビル敷地と第四ビル敷地との間に設けられた都市計画道路大阪駅前支線第五号線の道路上に位置し、地階の出入口から地上三階及び地下三階に通じる上下線各一本の昇降車路が螺旋状に設けられた工作物であるが、その地下三階部分においては、第三、第四ビルへの車両出入口が設けられ、地上三階部分においては、第三ビルと第四ビルとの間にそれぞれ、昇降車路側とビル側双方の受け台により支えられてオーバーブリッジ(空中連絡通路)が架けられている。

4  被告は、第三ビルの設計にあたり、事業地内の従前の地権者を収容するに必要な有効面積を地上一階地下一階に確保するとともに、地上レベルが駐停車車両に占拠されないようにするため、駐車場を地上三階及び地下三階に配置し、その進入路を第三ビル北側の都市計画道路上に設けることを構想したが、第三ビルが区分所有建物として民間に分譲されるものであるため、第三ビルの附属施設として公道上に右進入路を設けることには、道路占用許可基準との関係で問題があった。しかし、被告は、その一方で、昭和四五年ころから、本件事業により建設される都市計画道路の地下に公共地下駐車場(都市計画駐車場)を設置することを計画していたことから、右公共地下駐車場のために必要となる施設と一体のものとして前記進入路を設けることとし、その全体を公共地下駐車場の施設と位置付けることにより、道路占用許可に関する問題を解決することとした。

5  被告は、昭和五三年三月三〇日から、本件事業の一環として(右公共地下駐車場計画との関係では先行工事として)、本件車路の建設に着手し、昭和五四年六月三〇日に同車路は完成したが、公共地下駐車場の計画本体については、関係省庁との協議等に時間を要したため、昭和五五年二月二五日に都市計画決定がなされ、現在その建設工事が行われている。本件車路は、現在のところ、本件事業を行った被告都市再開発局が所管しているが、右公共地下駐車場の完成後は、被告建設局に移管されることになっている。

被告(所管・都市再開発局)は、昭和五七年三月一日、本件車路につき道路占用工作物としての道路占用承認(所管・土木局)を取得した。

6  本件使用契約は、第三ビル三階駐車場及び同ビル地下三階荷さばき場への車両の入出場のため本件車路を通行の用に供することを目的とし、その対価として、一か月につき三階駐車場の駐車契約台数に金三六〇〇円を乗じた額を支払うことを主な内容とするものであり、同契約においては、第三ビル地下三階荷さばき場に関しては、本件車路の使用の対価を徴収しないこととされた。右使用料の額は、被告が大阪市財産条例の定めるところに準じて算定したものである。

二以上の事実をもとに、原告の主張1ないし5について、順次判断する。

1  原告の主張1(所有権の帰属)について

本件車路は、第三ビル等の施設建築物とともに本件事業の一環として建設されたもので、地下三階の出入口及び地上三階のオーバーブリッジによって第三ビルと接続しており、第三ビルの地上三階、地下三階の各駐車場への事実上唯一の進入路となっているものではある。しかしながら、前記一3のとおり、右オーバーブリッジ(空中連絡通路)は、昇降車路側とビル側双方の受け台により支えられているものであるから、かかる通路により本件車路と第三ビルとが構造上依存しあっていると認めることはできないし、また、原告は、本件車路の螺旋状の車路部分の内側に設けられている円筒形の給排気設備は第三ビルの共用部分である旨を主張するけれども、そのように認めるに足りる証拠はない。

してみると、本件車路と第三ビルとは、連絡通路によって車両の往来が可能になっているというだけあって、本件証拠上、本件車路が第三ビルの建物と構造上一体となっているとすべき事情を見出すことはできず、むしろ、本件車路が、第三ビルの施設建築敷地内に存在するものではなく、その北側に隣接する都市計画道路の敷地内に設けられたものであり、右都市計画道路の地下に現在建設中の公共地下駐車場の施設の一部となることを予定して建設されたものであることに照らせば、本件車路が第三ビルの建物の一部を構成するものでないことは明らかというべきである。

この点、原告は、本件車路に屋根も囲壁もないことを指摘し、それゆえに本件車路は独立の所有権の客体となりえない旨を主張するが、右に判示したところによれば、仮に本件車路が独立性を有しないとしても、それは敷地に附合するものというべきであるから、原告の右主張は、本件車路が第三ビルの建物の一部を構成するものではないとの前記判断を何ら妨げるものではない。

そうすると、本件車路は、当然には、第三ビルの区分所有の対象となるものではなく、その所有権は、都市計画道路等の公共施設とともに、本件事業の施行者である被告に帰属するものというべきであるから、これが第三ビルの共用施設となるためには、被告から第三ビルの区分所有者となるべき者に対する何らかの処分行為等が存在しなければならないところ(第三ビル管理規約上、共用施設とされている「ランプウェイ内排気設備」については、右処分行為等がなされたものと推測できる)、本件において、被告が本件車路を第三ビルの共用施設とするための処分行為等をなしたとの主張、立証はない。したがって、本件車路は、第三ビル区分所有者らの共用施設ではなく、被告の所有する公有財産であるというべきである。

よって、原告の主張1は理由がない。

2  原告の主張2(無権限)について

前記一6のとおり、本件使用契約は、第三ビルの共用部分である地上三階駐車場及び地下三階荷さばき場への車両の入出場のため本件車路を使用することを目的とするものであるところ、地上三階駐車場及び地下三階荷さばき場への車両の入出場のためには、本件車路を使用することが必要不可欠であるから、第三ビルへ乗り入れようとする車両のため本件車路を利用できるようにすることは、共用部分の維持管理業務(管理規約二七条四号)ないし共用部分の利用に関する業務(同条一四号)、或いは、「区分所有者の共同生活の利益を保持するために必要な管理業務」(同条一九号)として、管理者がその職責を負うところである(なお、地上三階駐車場の賃貸業務は、同条一四号により管理者の職責とされるものと解される)。そして、管理者は、その職務に関し区分所有者を代理する権限を有する(建物の区分所有等に関する法律二六条二項)のであるから、本件使用契約当時第三ビルの管理者であった大阪市街地開発株式会社は、本件車路の使用契約の締結につき、第三ビルの区分所有者の団体(同法三条)を代理する権限を有していたものと解することができる。

もっとも、本件使用契約は、必ずしも僅少とはいえない対価を継続的に負担する内容のものであるから、管理者の右職責に照らし、当然に本件契約を締結する権限を有するとすることには、疑問の余地がないではない。しかしながら、本件車路の利用権限を確保することは、第三ビルの共用部分の機能を全うさせるために必要不可欠であるうえ、その使用料金については、被告の公有財産の使用を目的とするものゆえ、一定の公的ルールに則って算定されることになるのであるから、結局のところ、本件使用契約の締結は、対価負担の点も含めて、管理者において裁量を入れる余地のないものというべきである。そうであるなら、第三ビル管理者は、前記職責を全うするために必要な権限として、本件使用契約を締結する権限を有していたものと解するのが相当である。

よって、原告の主張2も理由がない。

3  原告の主張3(無料公開の原則)について

原告の主張するところは、本件車路が第三ビル駐車場への唯一の進入路であることを理由として、その使用料は、公の道路は一般に無料で交通の用に供せられるべしとの「道路の無料公開の原則」に準じ、無料であるべきであるというものであるが、右は、その主張内容が曖昧であって、本件使用契約に基づく使用料債務が存在しないことにつき、何らかの法律上の原因を主張するものと解することができないから、主張自体失当というべきである。

4  原告の主張4(信義則)について

まず、使用料徴収の取扱いが一貫していない旨の主張につき検討するに、本件車路の使用料が、第三ビル三階駐車場の契約車両のみを対象として徴収されており、地下三階荷さばき場へ向かう車両に関しては使用料が徴収されておらず、更に、地下三階駐車場へ向かう車両に関しては、そもそも本件使用契約の対象にすらされていないことは、既に認定したところであるが、地下三階駐車場は第三ビル区分所有者としての被告の専有部分であるから、これに関し被告が車路使用料を徴収していないのは当然のことであり、また、共有部分である地下三階荷さばき場に関して車路使用料を徴収していないのは、その施設の公益的な性格を考慮してのことと推測できるから、私的な契約駐車場である三階駐車場と取扱いを異にしているからといって、何ら不合理な差別的取扱いがなされているというべきものではない。したがって、右主張は、失当というべきである。

次に、原告は、第三ビルの分譲案内書(〈書証番号略〉)に本件車路の使用料について記載がなかったことを問題としているので、検討するに、第三ビル区分所有者らは、本件車路の使用料を徴収されることにより、自ら個人として三階駐車場を利用する場合はもとより、区分所有者の団体としても、共用施設である駐車場を利用に供して事業収入を得るうえで必然的に一定の負担を負うことになるのであるから、被告としては、第三ビルの分譲を希望する者に対し事前にその旨を告知することが望ましかったという余地はある。しかしながら、本件車路が第三ビルの共用部分に含まれていないことは、昭和五四年九月三日に行われた区分所有予定者集会までに配付された第三ビル管理規約案(〈書証番号略〉)の記載から容易に知ることができたのであり(そのうえ、分譲契約書が本訴において提出されていないことに照らせば、同契約書における共用部分の記載も、右管理規約案と同一であったものと推認できる)、更に、証拠(〈書証番号略〉、証人第十忠尚)によれば、当時被告職員であった第十忠尚は、右区分所有予定者集会において本件車路の使用料について説明しているのであって、これらの事情を勘案するならば、被告が車路使用料につき分譲案内に記載していなかったとの一事をもって、使用料の請求が信義則に反し許されないとまでいうことはできない。

よって、原告の主張4も理由がない。

5  原告の主張5(地方自治法違反)について

被告は、本件車路が大阪駅前市街地改造事業により設置されたものであるから、「公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律」五六条(同法は、昭和四四年六月一四日に施行された都市再開発法の附則三条一号により廃止されたが、同附則四条一項により、すでに施行中の市街地改造事業については効力を有するものとされており、本件事業はこれにあたる。)により、大阪市の財産の管理処分に関する法令の規定は適用されない旨を主張する。

しかしながら、同法五六条は、同法に基づく建築施設の管理処分に関する規定であるところ、本件車路が建築施設に該当するものではないことは先に認定したとおりであり(このことは被告自身も主張するところである)、したがって、本件車路につき同法五六条は適用されないものというべきである。

ところで、前記認定事実によれば、本件車路は、道路等の公共施設として設置されたものでないうえ、将来建設される予定の公共地下駐車場の附属施設となるべきことが予定されていたものの、その旨の機関決定を経ていたものでもないから、本件使用契約締結当時、大阪市の所有する普通財産であったものと認めることができ、また、地方自治法二四四条一項にいう「公の施設」にあたるものでもない。してみると、本件使用契約による対価は、地方自治法二二五条にいう「使用料」にあたるものではないから、これにつき同法九六条一項四号、二二八条の適用はなく、同法二三七条二項等の特別の規定に該当しない限り同法二三八条の五第一項により、条例や議会の議決を経ずに私権を設定して対価を徴収することができるものである。したがって、被告が、大阪市財産条例の規定するところに準ずることとして適正な対価を定め、本件使用契約を締結したことは、何ら地方自治法に違反するものではない。

よって、原告の主張5も理由がない。

三結論

以上の次第であるから、原告の主張1ないし5はいずれも理由がない。

よって、本訴請求を棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官亀岡幹雄 裁判官小池喜彦 裁判官筒井健夫)

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